愛は役に立たない

君が隣にいてくれさえすればなにもいらない。そんなことをあなたは言うけれど、あの日夜の公園で、もしおれが仕事を辞めたらどうする?なんて冗談みたくわたしに言ったこと、ぜんぜん忘れてなんかないんだ。ばらの花なんかちっとも役に立たない。愛なんて、何の役にも立たないものだ。
あの夜「付き合うって言ったら、どうする?」なんて言ってくれなきゃよかった。わたしとあなたの関係に名前をつけてくれないことだって、臆病さからだってわかっていた。やさしさだって信じようとしたわたしが馬鹿だった。どんどんあなたのきもちだけが募っていって、わたし苦しかったんだよ。重い割にそれを隠しもせずに会ったときだけ平気な顔なんてしてるから嫌になっちゃった。わたしなんて幸せに見合わない。そう思ってしまうの当然でしょう。あなたがもし、告白なんてしてくれなくて、この重さを孕んだままの関係を続けていられたなら、わたしは多分、いまみたいな不安さを、あなたに託していたのだと思う。傷を舐め合うみたいな真似を、ずっとしていられたのだと思う。あなたがわたしを好きにならなかったらよかったのに。ポエムみたいなどうしようもなさを宛てられる人間なんてそうそういないんだから。
きみはひどくやさしい。やさしさ故にわたしが尖っているときにその棘ごと包んでくれること、きみがその赤い自傷行為に酔っていること、そんなのは歪んでいること、まっとうではないこと。愛は役に立たないけどこころにやさしい。でもそれじゃだめなんだってさ。わたしたちはこれから何十年も死ぬまで生きなきゃいけないって。ごめんね。痛いのも生きてる証拠じゃないって知ってた。