もう会えない

あなたは知らないでしょう。わたしがあなたのことをどれだけ気にかけているか。「待ってんだけど、」そう言っていなくなるのってずるくないですか、自分がいくつもの顔を持ってるって自己申告してきたときからわたしはあなたのことが好きです、と同時に、ふられた気分でもありました。あなたの周りにはひとが集まるし、仕事もできて、結婚もしていて、子供がいて。あなたとはじめて出会ったとき、あなたはまだ結婚していませんでした。その数日後、あなたのことを特に知らなかったときに、結婚するそうです、と業務連絡のように伝えられ、休みを跨いだ次の日にはもう左手の薬指に指輪がはまっていて、あーこんなに急なんだって思った、こんなに人は急に結婚するんだなって。もちろん何年も大切なひとがいて、付き合ったのだと思う。けどそんなこと訊く必要もなく、きっかけもなく、ずっとあなたは幸せでした。ずっと幸せなんだろうな。これからもずっと。あなたはいとも簡単にわたしを忘れてしまうし、わたしもこれはただのブームだと思ってるけど、好きです。わたしの煙草を吸いたがるから、カプセルだけ潰して空気吸ってみてって言った。おいしそうだから、だって。そんなにかわいいといなくなるのさみしいです。これ以上自分の中できもちが濃くなっていくのはつらいから、はやく、いなくなってください。忘れたいです。愛おしいです。忘れたいです。